ジェンテという場所
日本の切り花を一人でも多くの方にご紹介したいという思いで、吉祥寺に店を構えてから25年以上の時が流れました。
その間、とっておきの花を使ったブーケやアレンジメントをご提供し、お客様から色々なことを教えていただき、
楽しい時間を過ごしてまいりましたが、
世の中の状況や求められることへの大きな変化、
そしてここまで花とともに歩いて来た私が今だからこそできることをよく考え、
もう少し先へ進むことにしました。
ジェンテは事前のオーダーのみをお受けするオーダーメイドの花屋です。
通常は店頭販売は行いません。
事前にいただいたご注文にしっかりと向き合って、吟味を重ね、
市場でベストと思える花合わせをセレクトし、それらを心を込めてアレンジして参ります。
そうして作られたアレンジメントやブーケは、
世界でたったひとつのオーダーメイドの作品としてお客様のお手元にお届けいたします。
ただ、直接お客様に対面で販売する喜びは完全に捨てきれず、
ひと月に数日間を目処に〈Open days〉として店舗販売をいたします
毎月の日時は dairy・facebook・instagram・stand.fmなどで、
お知らせいたします。
ジェンテの花
日本中の生産地を巡り、世界の市場を見て回りました。
そして、私はやっぱり日本の切り花が一番好きだと改めて思っています。
美しくパワー溢れるこだわりの花を求めて、休みの度に日本各地の花農家さんを訪ね歩きました。
そのたびに丁寧な仕事に心震え、日々の探究心、真摯に花と向き合う姿に感動しました。
花を育てる人々の心の温かさや豊かさは、日本人としての日々のくらしの中にこそあるのです。
また、都会のあわただしい暮らしの中で、
切り花こそがまさに生活に彩りを添えるものであるということを
多くの方に体感していただきたいと思っていました。
たった一輪の花が部屋にあるだけで、そこに息づく生命を感じ空気が和らぐのを感じていただけるでしょう。
もしも、季節の花が入ったブーケをプレゼントされたら、
ちっぽけな心の痛みはすーっと消えてしまうでしょう。
それどころか、花屋で素敵な花を買って帰る道すがらに、
何もかもが美しく世界中が輝いて見えるというような経験をされたことがある方もいらっしゃることでしょう。
花にはそれだけの大きな力があるのです。
嬉しいことに多くの育種家、生産者、市場の方などと関わり合うことができています。
そして、さらにこれは素敵! と思った花たちを上手に作ってくださる生産者さんにお願いして、
まだ生産されていない花を作付けしてもらったり、
新しい花を生み出す現場に参加したり、年間通して出荷するための道筋をつけたり、
まだ名前もない新品種の花を試験的に試してみたりと、
様々な形で日本の切り花と関わることができるようになりました。
私のために作ってくださったオリジナルの花もありますし、
私が名前をつけた花たちもいます。
時代に見合った扱いやすい日持ちの良い切り花を生産していただくことで、
我々は選択の幅も広がり思い思いの組み合わせで、
より一層素敵なブーケやアレンジメントを作れるようになりました。
そして、この活動は私のライフワークとしてこれからも続けていきたいと思っています。
一方、仕入れ日の早朝、市場で出会う花とはドキッとするような心に響く出合いがあります。
香りや手触り、質感や色、季節感や旬としての勢い、花本来の美しさなどが心を大きく突き動かすのです。
「ジェンテの花は長持ちする」とお客様からお話しいただくことがあります。
日本の素晴らしい生産者さんの花をみなさまのお手元にお渡ししていることが一番の要因です。
しかしながら、本来の性質上、残念ながら長持ちしない花もあります。
それでもその花たちを仕入れるのは、
香りが大変豊かであるとか、
特別な色の花びらを持っていたり触ると心地よい質感の葉が付いていたり、
どこか必ず優れたところのある花たちなのです。
長持ちすることも大切ですが、
それ以上に心を揺り動かす感動も大切なことだと思っています。
そうした日本の切り花たちと出会い、感じて、そして今日もまた、
素敵な花たちを皆様にご提供していきたいと思います。
ジェンテのアレンジメント
きれいな花をただ提供することが目的ではありません。
もともとそのままでも綺麗な花たちを、
何種類か組み合わせ、束ねたりアレンジしたりすることで、
世界にたったひとつの特別なものとして喜んでいただくことこそが、
最も大切なことだと思っています。
そのためには、ご注文いただいく時に、
様々な情報を教えていただくことから始まります。
そこから感じられるイメージを形にして行くのがジェンテのブーケやアレンジメントです。
「御用途は何でしょう?」
「どなたのためですか?」
「その方はどんなことがお好きで、何を大切にされているでしょう?」
「どんなシーンでお渡しするのでしょう?」
「どのようなインテリアで、どのような器にいけるのでしょう?」
あらゆる情報から想像しイメージしたその方のためだけの特別な花を提供したいのです。
生産者のこだわりやその風景、季節の移ろい、今という時代感を、
私なりに咀嚼した新たな花合わせで、香りよく心に響くような作品にして、
完全なオーダーメイドでお届けして参ります。
ジェンテのアレンジメントは、世界でたったひとつ。
貴女のためだけのオリジナルです。
ジェンテ、そして並木容子
花を扱って仕事ができることの幸せを日々感じています。
大好きなものを扱って、そして、お客様に喜んでいただけるのですから、こんなに幸せな仕事はありません。
だからこそ、きちんとまじめに、丁寧に1つ1つの仕事に心を込めたいのです。
ジェンテでしか叶えられない幸福感を提供したいのです。
不器用な生き方かもしれません。
でも、そうすることで感じることの出来る、たった1つの喜びが待っているとしたら。
それこそが、この仕事を続けてきた意義なのだと思います。
5年、10年を見越して、新しい花を作る育種家さん、その花を、心を込めて育てる生産者さん、
そうした花たちを発見して提供して下さる市場の方々、
そうした人々から教えていただく様々なことや熱い思いを、
私だからこその特別な方法で、お客様にご提供したいと強く思います。